不器用なラーメン屋のオヤジは人心掌握術に長けている
生来そうなのか、後天的にそうなったのか、定かではないが、なんとなーく常にぶすっとした(ちょっと怒ってる?)感じの人が居る。
とりわけラーメン屋のオヤジにそういう人が多い。
そんなオヤジは大抵の返答を
「おう。」
で済ましてしまう。
「ありがとうございました」
も
「あっしたー」
とかになる。
かくいうそんな店主が近所のラーメン屋にも居る。
今日久しぶりに(3週間ぶりくらい)にそんな店主の元を訪ねた。
シンプルにラーメンのみ。
食券を従業員に渡す。
暫くして
「はい。ラーメン、麺かた、一丁ー。」(おう以外も言ってるやん…)
ドンっとカウンター席の向かいの一段高くなった部分に置いてくれた。
あれ?
なんかちっちゃい茶碗ついてるよ?
俺、ラーメンしか頼んでないよ?
あれ?
なんか味付け卵ついてるよ?
トッピングしてないよ?
…そうなのだ。
最近無言で何かしらオマケしてくれるようになったのだ。
オヤジ、人を見る目あるな…
そう、俺は味付け卵に目がない…
時には、道端で出くわして会釈すると
「おう。」
と返してくれたりする仲なのだ。
すぐさまオマケのお礼を言おうとするも、オヤジはもう背を向けて何やら切っている。多分豚…
「お礼はいらねえ。
そんなの求めてやってるわけじゃねー。
美味いって思いだけで充分俺はお腹いっぱいだ。」
オヤジの背中はそう語って居た。
退店時には奥の方に引っ込んでいて声もかけられない始末。
どこまでお礼を言わせないつもりかオヤジめ…
少しお水を飲み飲みタイミングを計らうも、結局諦めて大きめの声で
「ごちそうさまでさまでしたー!」
と僕は言った。
そしたら奥の方からあの一言が返ってきたんだ。
「おう。」
そんな不器用なオヤジが俺はとても好きだ。