流れ星をずっと見たことがなかった男がついに目撃にした夜のこと
2017.12.14
僕は流れ星を一度も見たことがなかった。
流れ星に願い事すると叶うというジンクスがある。
物心ついた頃にはあったジンクス。
流星群が来る度に、手ごろな頭上の夜空を眺めたことは誰でもあると思う。
”何百年に一度の〇〇座流星群”が気のせいか度々来るけれど、その度に一応夜空を見上げる僕の頭上には一度も流れてくれなかった。
寒いのに、光の少ない暗い場所に行って、長時間夜空を凝視してまで見たいって思わなかったのは、結局そうまでして叶えたいほどの願いがなかったからかもしれない。
だから見えなかったんだってことに今日気付いた。
今の僕には沢山ある。
欲張りすぎるほど、そして、その全部が半端なく強い願だ。
そんな今夜。
どうやらふたご座流星群がくるらしい。
そんな訳で絶対に流星群を見る覚悟で服を着こんで、開封したてのホッカイロを沢山ポケットに詰め込んで家を出た。
末端冷え性の一大決心だ。
何時間でも粘ったるぞー!
意気込んで来たのはいいのだけれど、よく歌の練習でくるお気に入りの真っ暗スポットに着いてすぐのこと。
・・・あっさり見えた。
まあ、人生初なんてそんなもんだ。
その瞬間口をついて一つ願いがでた。
内容はばらしてしまうと叶わなそうなので伏せておくけど、その後も沢山の流れ星を見て、沢山願い事をした。
昔は僕にもみんな幸せになってほしい!なんて尊いことを口走っていた時代があったらしいけど、いい大人の今の僕にも自分以外の沢山の人のことを願えた。
夜空はちょっとだけ人を童心に返してくれるようだ。
そして、何故だか星が流れる度に願い事と一緒に涙がこぼれた。
寒空の下冷え切った頬を流れる自分の涙は流れた跡がくっきりと感じられるほど暖かく、極寒の中でもその熱が冷めてしまうことなんてないかのようだった。
何に向けるでもなく、感謝の念が心の底から湧いてきた。
最後に一番最初に口をついて出た願い事だけもう一度言って帰ろうとじっと空を見てた。
いつくるかわからないからずっとうわ言のようにブツブツと願い事をしてた。
ふと、今夜一番の光が視界に飛び込んで来た。
びゅーん。
それから後、帰り道、空は絶対に見上げないようにした。
中途半端な光で上書きしたくなかった。
さっき見た一番の光を今日で最後の光にしたかった。
いや、人生最初で最後の流れ星にしたかった。
ポケットのホッカイロがとても熱かった。
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